ネタの旅

路線バスだけで金沢から福井まで移動できるか?


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●日程

 1996年3月?日(記録なし・時刻も同様)
 【金沢駅前】8:15発−(北鉄バス)→【小松駅前】−(小松バス)→【粟津温泉】−(北鉄バス)→【山代温泉東口】−(加賀温泉バスか北鉄バス)→【大聖寺駅前】−(加賀温泉バスか北鉄バス)→【吉崎(石川県加賀市)】12:53頃着---(徒歩・5分ほど)---【吉崎(福井県金津町)】13:00発−(金津町営バス)→【芦原温泉駅前】−(京福バス)→【丸岡】−(京福バス)→【森田駅前】14:30頃着(福井駅前行きのバスなので終点まで行くと福井駅前。)

●経緯

 ちょうど春休みの時期(懐かしい響きである)で、定期券がなかった。しかし、5時頃から大学の方で用事があった。つまり、5時頃までに着けばよいのである。それに定期もないと来ると、かねてからやろうと思っていたことをやるときが来たのである。路線バスで金沢から福井までいつか行こうと思っていた。それを実際にやってみるのである。

●どこを通るか

 まず、こういうことをしようとしてもっとも手っ取り早いのが
 金沢駅→小松空港→福井駅
 というルートである。乗換を無視すれば2時間程度で着くことができ、確実である。しかしこれでは面白くない。さらに、
 金沢駅→加賀温泉郷各温泉 
 という特急バスもあるが、これも手っ取り早すぎて面白くない。
 また、奇抜なアイデアとしては
 金沢駅→名古屋駅→福井駅
 というものもある。これはまあないとしても、やはり最低条件として普通のバス停を、乗客がいれば拾い、いなければ通過するというものでなくてはならない。そこで少し古い北陸鉄道バスの時刻表と路線図を見ていたら
 金沢駅前→小松駅前
 という路線があることが分かった。これは特急・急行バスではなく、本当に小さなバス停を通りながら小松まで行くバスである。これは利用しなければならない。そのあと、この時刻表によると
 小松駅前−(粟津温泉経由)→山代温泉
 というものがあった。実際は一部区間の分社化により粟津温泉で路線が切られていた。そのあとであるが、加賀温泉駅の方へ出てもよいが、バスの本数が少ないようである。見ていると
 山代温泉−(大聖寺駅前経由)→塩屋
 というバスがあり(これも分社化で大聖寺駅前で路線が切られていた。)これの途中吉崎で降りると福井県は目の前である。

 ここまでは古い時刻表上、路線がつながっていたのである。そのあと、吉崎付近の地図を見ているとどうも福井県側に入ると観光地らしい。そうなると路線バスぐらいはあるだろう。芦原温泉駅(金津町)あるいは芦原温泉(芦原町)まで行けばどうにか丸岡までつながっているはずだし、丸岡まで行くことができれば森田経由の福井駅前行きのバスがあったはずだから、これも問題ないだろう、ということで、そのあとの接続も考え8時15分金沢駅前発のバスに乗ることにした。

 あと、白山麓を通るバスで
 金沢駅前−(白峰経由)→勝山駅前
 というものも季節運行されているらしいが、この季節はなかった。これも手っ取り早いがいつも通るコース(JR)と大きくはずれているので、もし走っていたとしても今回はやめる。

●金沢駅前−小松駅前

 いつも通り自転車で金沢駅へ行く。そしてホームの方へ行かずそのまま東口へ行き、バス乗り場へ行く。小松駅前行きのバスは、金沢市内を走るバスと違い、系統番号がない。行先方向幕も方向別に色分けしてあるものではなく、白地に黒である。しかしながらバス自体は金沢市内を走っているものと変わりない。

 発車して、金沢の町の方を目指す。このあたり、全く普通のバスと同じである。この区間では小松まで行くというよりも駅から中心部へ行くバスとなっているらしい。そのため、スーツを着たサラリーマンらしき人がどんどん降りていく。

 バスは中心部を走り、犀川を渡る。全くこのあたりは市内を走るバスと変わりない。そして国道157号線をそのまま走り、8号線まで出る。本来、小松へ行くならこのまま8号線を走るべきなのだが、8号線の下をくぐり、旧国道8号線というべき道を走っている。野々市駅前を走る。そして松任駅前に出てきてしまった。この道はこうやって続いていたのかと初めて知った。

 松任駅前から少し松任市内を走り、南松任というバス停である。ここまで金沢市内のバスは普通に来て、ここが終点になるものも多い。ここ終点のバスはきちんと系統番号を与えられているものである。

 そうしてしばらく走りいよいよ8号線に出る。しかしこれも一瞬で、しばらくするとまたはずれてしまう。旧8号線を通るのである。2車線のあまり広くない道を通り、バス停をどんどん通過している。手取川を渡り、手取フィッシュランドという遊園地で多くの乗客を降ろして、寺井町の市街地に入っていく。JRの方の「寺井」は、本当は根上町にあり、こちらが本当の寺井である。

 ここから小松駅まで行くバスが多くある。つまり、この金沢−小松のバスは、金沢−松任、寺井−小松の2つの系統のバスを足したものと、その間を埋めるバスだったのである。特急で言うと、雷鳥+(北越)+いなほ=白鳥というものがあるが、それと同じようなものである。ただし、運転本数は確か1時間に1本はあったはずである。

 寺井の市街地を抜け、8号線と合流する。こちらが旧8号線を通っていたが、新8号線の方はバイパス的な道路で、合流点はすべてインターチェンジのような形で作られている。このバスは金沢駅を出て2つめの「武蔵ヶ辻」から旧8号線に忠実に走ってきたのである。それだけの話であった。

 バスは8号線を走り小松の市街地に入っていく。そして、右折して8号線からも旧8号線からも分かれて小松駅を目指す。8号線と小松駅はさほど離れていないのでまもなく小松駅に到着する。このように小松駅前までは楽に来ることができた。運賃は確か700円台だったと思う。

●小松駅前−粟津温泉

 時刻表ではここから山代温泉へ行くことになっている。しかし山代温泉へ行くバスがない。小松駅−山代温泉のバスの一部が小松バスに移管されて、系統が区切られてしまったようである。とにかく西へ行かないと福井へ着かないので粟津温泉へ行くバスに乗ることにする。

 小松駅を出て、小松の市街地のごちゃごちゃしたところを走る。そして一瞬そのルートからはずれ、小松市民病院の前を通り再び市街地となる。このごちゃごちゃしたところを走ることにより、確実に西に向かっているのである。もちろんJRの線路とも並行している。小松と粟津の間の小松寄りで、海側の窓を見ると畑がありその向こうに家が並んでいるがその中を走っているようである。

 しばらくそういう細い道を通り、コマツの工場のあたりを走り、見慣れた北陸本線をオーバークロスする。そして国道8号線に出てくる。しばらく8号線を走り、粟津駅の近くで「粟津駅」というバス停。実際粟津駅と粟津温泉は離れているからここが終点になるのではない。8号線を少し走り、左折して山の方へ行く。水田が多いが、突然私立高校があったりもする。そして、国道8号線小松バイパスという山の中を走っている道路(加賀産業開発道路の延長)の下をくぐり、しばらくすると粟津温泉街に入る。そして温泉街の中の狭いところで降ろされ、ここで待っていると山代温泉行きのバスが来ますと言う案内であった。

●粟津温泉−山代温泉東口

 昔は粟津駅から粟津温泉、動橋から片山津温泉・山代・山中、大聖寺から山中温泉というような北陸鉄道の路線があったのだが、当然今はなくなっている。その時に使用していた駅をバス停に転用することがあるのだが、どうも粟津温泉についてはそういう雰囲気もなかった。

 しばらく待っていると、山代温泉へ行くバスが来た。あまり乗客もいなく、途中のバス停にもほとんど止まらない。走っているところも山の中で、とりあえず始発と終点が温泉地であるから走っているようなもので途中は那谷寺ぐらいしか需要のあるところはないだろう。とにかくこの区間は山の中を走っていたという記憶しかない。

●山代温泉東口−大聖寺駅前

 そうして、山代温泉まで来た。山代温泉東口というバス停はおそらく昔の北陸鉄道の駅であったと思われる雰囲気がある。ここで時間があったので線路とおぼしきところを歩いてみようとしたがよく分からなかった。ちなみに片山津温泉のバス停も昔の駅のような感じがあるが、これも廃線跡がよく分からなくなっている。

 山代温泉では少し時間があったので、バス停の中にある食堂で昼ご飯をとる。毎日通学をしているところと同じ目的地であり、朝の8時頃に出てきて、まん中より少し過ぎたあたりで昼食をとっているのである。たまにはこういうこともよいだろう。

 ここからのバスも本来は大聖寺駅前を経て塩屋海岸まで行くものであったが、例によって系統が切られて、大聖寺駅前での乗換を余儀なくされている。

 山代温泉を出て、しばらくは温泉街を走る。このとき山代温泉へ来たのは初めてだったのだが、今は仕事でよく来るところである。温泉街を抜けると、割と水田のなかを走り、8号線と交差してしばらくして大聖寺の市街地に入る。見慣れた北陸本線を今度はアンダークロスして市街地を走ると大聖寺駅前であった。

●大聖寺駅前−吉崎

 大聖寺駅前に着いて、ふと横を見ると塩屋行きのバスが、多くの乗客を乗せて発車するところだった。あわてて飛び乗る。これだけ接続がよいのは当然で、この乗換はかつて1本のバスだったものが都合で分かれただけだったのである。しかしながら時刻自体はほとんど見直していないため、こういう上手い接続だった。もっとも、大聖寺駅前まで来なくても、市街地のどこかのバス停で乗り換えることもできたのだ。

 大聖寺の市街地を走り、市街地のまま国道305号線を走る。ここから先のルートは、このあと車で何回か福井まで行ったときに愛用したルートである。市街地の中の305号線を走り右折する。これも病院へよるために少し横道へそれるだけで、小松でも同じ事をしていた。

 再び305号線に復帰して、しばらく走りだんだん市街地からはずれる。このルートは車でも何回か通ることになるルートであるが、自転車でも通ることになるルートである。これについてはまた別の機会で。そうして、大聖寺川に沿って、水田のなかを走り、突然北陸自動車道がオーバークロスしたりもしながら、乗客も確実に減っていく。

 そして、しばらくして、少し集落の中へ入る。305号線から少しはずれたところで吉崎というバス停であった。福井へ行くには305号線からはずれて塩屋まで行ってはいけないので、ここで降りる。

●吉崎(石川県加賀市)−吉崎(福井県坂井郡金津町)

 それから305号線に戻り、しばらくの間歩かなくてはならない。バス会社と認可の関係かどうか分からないが、この305号線、そして8号線とも県境をまたぐ路線バスがない。157号線の方は季節営業であるものの、364号線はものすごい山の中を通るため、これまた路線バスがない。しかしながら305号線の方は、石川県側の最後のバス停から福井県側の最初のバス停まで5分ほど歩くだけで行くことができるのである。しかも、そのまま305号線を歩くだけでよいのである。そこで今回このルートをとった。

 305号線を歩く。集落の中である。そして突然「福井県金津町」という標識があり「ようこそ福井県へ」という看板まである。これが集落の中での話である。県境を歩いて渡ることになったが、当然振り返ってみると「石川県加賀市」と書いてある。集落の中で県境となっている。家と家の間が県境で、その家と家の間も特別な川が流れているわけでも何でもなく、普通の家と家の間の隙間しかない。

 あっけない県境に驚きながら歩くと、吉崎御坊というものが見えて来た。そしてそこの駐車場に金津町営バスと京福バスがそれなりの乗客を乗せて待っているのである。どちらに乗っても目的は達せられるようである。金津町営バスの方はそのまま金津町の中をさまよって中心部の芦原温泉駅へ、京福バスの方はこのまま芦原町に入り、芦原温泉へ行くようである。通学の時、列車の窓から金津町営バスが走っていることが気になっていたので、そちらの方に乗る。乗るなり出発してしまった。

 実はこの接続というのが奇跡的であった。あとでここへ来たとき、バスの時刻表を見たのだが、このあとのバスが15時だったか17時だったかなのである。ここで乗換ができなければ、再び石川県へ行き、大聖寺へ戻り列車で福井へ行かなければならなかった。観光地だからバスがあるだろうということではなく、本当にここの集落としてきているバスだけだったのである。

●吉崎−芦原温泉駅

 京福バスもほぼ同時に出発した。こちらの方は少し石川県の方へ行き、すぐに右折して少し山の中を走ると北潟湖を右に見て走る。ちなみに、いまはここから石川県への短距離であるがバイパスができたのだが、これは当時なかった話で、いずれにせよバスには関係ないので省略する。

 そして、北潟湖に沿って山道を走る。対岸が国道305号線でそこには同時に発車した京福バスが見える。同じ方向であるが対岸は芦原町であり、この「金津町営バス」のテリトリーではないのである。

 この山道も、その後車で何回か通ったし、自転車でも一度通っている。山道といっても湖のそばを通るのでほとんど坂はない。ただし山が迫っているのでカーブがある。そういう道をしばらく走る。バスの中は100%に近い乗車率なのだが、運転手と私以外はすべて60歳以上とおぼしき人しか乗っていない。若い人の乗る時間でもないし、若い人は車になってしまう。こういうお年寄りを乗せるというのが町営バスに課された使命で、金沢から福井までバスで移動しようとする物好きを乗せるということが使命ではない。

 途中から湖からはずれて右折する。そして水田の中と当時にときどき集落のあるところを走る。しつこいが、ここで覚えた道があとで役に立ったことは言うまでもない。そして、そういうところを走り、見慣れた北陸本線が見えてくる、その下をくぐらずに右折すると細呂木駅であった。これでこの駅の前を走っていた金津町営バスの謎も分かったし、この駅へ来る方法も分かった。また、この駅を出てから道路標識に「加賀」と書いてあった理由も分かった。

 細呂木駅前を過ぎてからは広い谷を通る。水田が広がっていて少し集落もあるという景色で、いつも北陸本線から見ている景色である。線路から道路を見るのと道路から線路を見るということの違いだけである。そして、金津の市街地に入っていく。JRならすぐにブレーキが掛かり芦原温泉駅にさしかかるというところなのだが、ここがバスの性質で、市街地に入ってから少し迂回し、細々と乗客を降ろしながらようやく芦原温泉駅に着くというものであった。

●芦原温泉駅−本丸岡

 石川県側でも私鉄の廃線という話が出たが、ここでも私鉄が廃止されている。この芦原温泉駅周辺だけを見ても、ここから丸岡を経て東古市まで京福電鉄があった。(そしてそのまま現在の永平寺線につながっているという形)また、国鉄北陸本線三国支線というものがここから芦原温泉(駅ではなく温泉街)へつながっていた。これが廃止されてこの駅が金津駅から芦原温泉駅という名称になったのである。とにかくこの2線の跡はわずかであるが北陸本線からも見ることができる。ちなみに、福井方面から来る芦原温泉止まりの普通列車が4番ホームではなく1番ホームに入り、折り返しの福井方面行き乗り場が混乱するというのは25年以上も前に廃止された国鉄三国支線の名残であるという。また、JR北陸本線の芦原温泉の次、丸岡と今から向かおうとする丸岡(本丸岡)は別である。JR丸岡駅は福井県坂井郡坂井町にあり、本丸岡は福井県坂井郡丸岡町にある。隣の町名を名乗る駅が2つ続くのである。今のJR丸岡から本丸岡まで、昔京福電鉄があったのである。

 話がそれたが、金津町の芦原温泉駅でしばらくバスを待っていると丸岡行き(だったか、永平寺行きだったか)のバスが来た。芦原町の芦原温泉から来るバスで、結局吉崎でどちらに乗っても結果が同じという所以がこれである。今から思っても金津町営バスに乗ることができてよかったと思う。

 芦原温泉駅前を出て、すぐに北陸本線をアンダークロスする。そして、昔の京福電鉄に少し沿った道を走る。水田の中であるが、京福電鉄の跡はすぐに分からなくなってしまった。水田・集落のなかを走りしばらくして8号線に出る。しばらくは8号線を走る。そして、ここでも新旧の8号線が分岐するところである。当然ながら旧8号線を走り、そのまま丸岡町の市街地を目指す。そして少し市街地を迂回して本丸岡に到着する。

●本丸岡−森田駅前

 このバス停は当然旧京福電鉄の駅でありその名残はある。その前後の廃線跡がよく分からなくなっているが駅舎自体はそのままらしい。

 ここで少し時間がある。バスもここから何路線か出ている。「福井県大・医大前行き」というバスもあり、当然このバスに乗れば手っ取り早く目的地に着くのだが、自転車を森田駅前においてあるので、このバスに乗ると帰りが不便である。

 しばらくして福井駅前行きのバスが来る。それに乗る。しばらく丸岡の市街地を迂回したが、そのまま旧8号線に忠実に走る。そうして見慣れた景色になり森田駅前であった。ここで降りることにする。このまま乗っていると福井駅前に行ってしまうので、金沢駅前−福井駅前の路線バスでの移動は可能という結果になった。ただし、時間が恐ろしくかかるということと(6時間15分。普通列車でも大阪へ行けてしまいます。)お金もかかる(2,500円ぐらい。JRの普通列車なら往復ができます。)ということで非現実的であるということは確かである。いくらJRがストライキになったとしても利用するルートではないということである。

●最後に

 6時間以上かかっているのだが全くそれを感じないほど楽しいものであった。本当は酔ってしまうのでバスは嫌いなのだが、酔うことなく旅をすることができた。

 特に大聖寺駅前からの道については、その後役に立ったのは何度か述べたことである。また、これが逆に金沢駅前−富山駅前だと様々なルートがあり、楽なものである。それにしても吉崎で乗換がスムーズでよかったと思う。後で奇跡的な乗換だったと分かって驚いている次第である。


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